いつしか、あの夢を見なくなった…

      2022/12/05

 探している夢を見ていた。ずーっと何かを探している夢を…砂漠の夢を。どこまでも、どこまでも続く砂漠の夢を…

 何かが完成されていない時に、人はそれを完成させたいと思って完全を探し求め人は人生の旅に出ます。失ったもの、それは突然の愛の幕切れかもしれないし、甘えたい時期の家族や親との別れかもしれません。

 大人になるまで僕は、街の家々の灯りが羨ましかった。その家の中にある温もりが…まるでマッチ売りの少女が冬の寒空の下で、マッチを擦っては、その灯りの中に見た楽しい食卓や優しい笑顔に求めたように…

 誰もがそんな世界に憧れる。完璧な世界…欠けることのない安心できる世界を。その完璧なものを誰かに求めて苦しむ人々。

 心理カウンセラーという職について、見えてきた世界は、ガキの頃に羨ましいと思った家の灯火の中にも、それぞれに抱えている孤独や悲しみがあって、愛があっても病に苦しむ人々や、お金が有り余るほどあっても孤独を感じ眠れない夜を過ごす人も…

 心理カウンセラーになって知ったこと。街角の中にあった憧れた灯火の中にも、人々が、日常という包帯に心の傷を隠して、家の灯火を一生懸命に灯している。誰もが自分だけが苦しんでいると思っている。自分もガキの頃もそうだった…窓の灯火にとらわれて、それぞれが、その中で懸命に生きている人びとなんて知ることもなかった。あの幼い頃…いや、身体を乗り出して灯火の中をのぞく術もなかったから。

 そのことを知ってガッカリしたかって? とんでもない。感動すら今は覚えている。生きている皆が頑張っていると思えるから。そんな人たちに、今は援助できる力を身につけたから。それが心理カウンセラーだと思う。そして人を救う力は自分を癒す力にもなるから。それが心理の仕事です。

 いつの間にか僕は砂漠の夢を見なくなっていた…


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心理カウンセラー衛藤信之
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