真なる強さ。

      2019/04/21

 「誰にも縛られたくないと、逃げ込んだこの夜に…」尾崎豊の歌だけれど。

 若い頃には、誰もが自由を侵されたくはないし、大人に縛られたくはない。そして、学校や組織に組み込まれるような不安に襲われます。そんな大人に対して意味もなく、反抗したくなる時期があります。

 僕にも、そんな時期がありました。だから、誰にも抑えつけられたくなくて、極真で空手を身につけ、ワル組の集団からも距離を取るためにピリピリしていたこともあった。

 僕がカウンセリングをしていたケンジ(仮名)もそういう一人だった。チョッとしたことで周囲にキレて、家族にも暴力をふるう!

 そんな彼は、ある日チョッとしたやりとりでキレて、僕にも殴りかかったことがありました。彼の腕をひねり上げて、事なきを得たが、こちらも息があがる。

 「ケンジ!お前は腕力はあるけど、ものすごく弱いよ」「なに~っ!くそ~離せ!」と威勢はいい。

 「ケンジ、お前が弱いのは誰とも戦っていないからだ。きっと、お前は今まで戦って来たと思うかもしれんが、それは、お前の好きなように生きて来ただけなんだよ。戦うって言うのは、イヤな事と向き合うって事なんだよ。お前よりも腕力の強いプロレスラーだって、目上の人には頭を下げてるよ。その腕力でアウトローになって、ヤクザにでもなるのか?!ヤクザでも、上下関係は一般の社会よりも厳しいんだぞ!」

 「なぁ、手をはなすから落ち着け」と彼の締め上げていた手を離した。

 彼は鼻息荒く、こちらを睨みつけていたが、もう殴りかかる気持ちは無いようだった。

 なぁ、ケンジさぁ。子供は自分の思ったように生きたいと思っている。お前は、その子供に腕力がついただけなんだよ。それはガキなんだよ。だから、お前は弱いんだよ。

 お前は「自分らしく生きたい」と、お前のわがままさを周囲に通しているだけだから。だから、弱いんだよ。本当の強さをケンジは知らない。

 お前は誰かのために生きたことがあるのか?

 お前のお父さんやお母さんだって、頭を下げてケンジの生活を守っている。お父さんだって誰にも頭を下げたくない時もあるんだよ。でも、家族のために、生活のためには、ニコニコしなくちゃいけないから頭を下げてんだ。

 ケンジは誰かのために頭なんか下げたことなんかないだろ。本物の強さは、誰かのために自分を抑えて頭を下げれることなんだよ。

 自分は間違っていなくても、仲間のためには、己れの意地を我慢して、組織の中で将棋の駒にテッすることもあるんだよ。それにはなぁ、スゴい精神力がいるんだ。

 いや自分らしさを腕力で通すよりも、スゴいことなんだぞ。集団と何かをするということは、調整力も自己をアピールする気持ちを抑える忍耐力も必要になるんだ。

 いつか、お前にもわかるだろうよ。本当に人生と戦うってことは、いつも特別でないと楽しめない、なんてのは弱い奴らだってことを…。誰からも普通の扱いをされても、笑ってしっかり生きるってことが強さなんだよ。 それが人生と戦っているってことなんだよ。

 仲間と一緒に何かをできない奴は、一人でワガママにイキガッテいるだけで、誰でも耐えているストレスに耐えれねぇってことなんだよ。そんな我慢も、根気もない奴は決して強くないってことだ。

 ケンジは、お前はさぁ子供のように特別に扱ってもらわないとダメな、お子ちゃまなんだよ。

大人はそんな弱くないんだよ。

お前もいつかは人生と戦えよ!

普通にシッカリ生きる力を持てよ! 普通の人が耐えている、誰もが思うようにならない人生に耐えれないような奴は、ガキンチョなんだよ。

 これは、8年も前のことです。そのケンジ君も、今は立派に社会と戦って生きています。

 自分は特別でありたい、自分は人と違って生きたい。特別でなければ楽しめないのは、現代人の病です…それは、本当に現代人が幼児化しているのだと思っています。

 幼児のように、一攫千金を夢見て、勝ち組を目指して、それが上手くいかなくなると、秋葉原に自動車で突っ込み、路上で人に切りつける悪目立ちしたがる犯罪者がいます。

 これらは精神が弱いのだと僕は思っています。本当の大人は、強いのです。リストラされても、離婚されても、大切な人と離別しても、そのような思うような人生でない瞬間も、魂を腐らせないで、思うようにならない今日を、負けないでシッカリ生きれることが、僕は真の強さだと思っています。

 そう、大人は強いんだよ。バカにするなガキンチョ!






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