Home 受講生の感想レポート 相手を信じているつもりが、心のどこかで変えようとしていた…
相手を信じているつもりが、心のどこかで変えようとしていた…

大阪校  堤 良介さん(30歳 男性)


基礎コース12講座の中で、最も私の人生に影響を与えた言葉は、基礎コース前編の第1講座で紹介されたカールロジャース博士の言葉「正そうとする前に、わかろうとせよ」です。私の場合は、講座の中で衛藤先生がよく使われていた表現の「相手を変えようとする前に、まず、わかろうとせよ」という方が心に強く残っています。

私は、以前よりコーチングを勉強しており、「悩みの答えは相手の中にある」「相手はすでに完璧な存在である」「相手を100%信じる」ということを常に頭に置いていたつもりでしたが、この「相手を変えようとする前に、まず、わかろうとせよ」という言葉を聞いて、私は相手を信じているつもりだったが、心のどこかで変えようとしているのかもしれないと気付かされました。

子どものころから、友達の悩みを聴いたり、相談にのったりすることが多く、不登校になった友達と遊んだり、うつ病になって休職中の先輩と遊んだりと、自分の中ではあたりまえのように、そういった人達と関わってきていたようです。

ところが数年前、地元に帰った大学時代の友人から久しぶりに連絡がありました。何か様子がおかしいなと思った私は、「どうしたん?」とだけ聞くと、「ありがとう。その言葉がめっちゃ嬉しいわ。」と一言。そして、「俺、うつ病になってしまって、しばらく会社休んでるんよ。」と言うのです。

このときの「どうしたん?」は、きっと「まず、わかろうとせよ」の部分。今まで、私が無意識にできていた優しさの部分であり、この友人も、それを期待して連絡をくれたのだと思います。
そして、いつものように、しばらくの間、しっかりと相手の話を聴きました。

と、ここまではよかったのですが・・・そのころの私は自己啓発本を読みあさっており、「もっとこうすれば楽しく生きられる」という“テクニック“を知識としてたくさんもっていました。
そんな私が、よかれと思ってその友人にしたことは、その“テクニック”の紹介。その友人のためと思い、いろいろ紹介した結果、その友人の口から出た言葉は「元気なところに引っ張られている感じが、すごくしんどい。」でした。

このときのショックは今でも忘れることができません。


きっと、その友人からすれば、「元気のない自分は相手に受け入れられない。自分は変わらなければならない。」と責められている感じがしていたのだと思います。

日本メンタルヘルス協会で学んだ今だからこそ、その友人の問題を、自分の問題にしてしまっていたなとか、母子一体感(子どもがお母さんは自分のことを言わなくても分かってくれる、自分の思い通りに動いてくれるはずと期待してしまう、甘えや依存心のこと)が強すぎたなと、客観的に理解することができます。

他にも、実際にコーチングをしていて上手くいかなかったケースを振り返ってみると、この「相手を変えようとする前に、まず、わかろうとせよ」の部分で失敗しているケースがほとんどであることがわかりました。その逆もしかりで、上手くいったセッションのあとにクライアントさんからいただく言葉も、この部分に関連していることが多いように思います。

それほど、私にとってインパクトの強かった「相手を変えようとする前に、まず、わかろうとせよ」という言葉や、自分の状態を客観的に把握できるようになった、「相手の行動を受容できる領域と受容できない領域の仕組み」を学んだ基礎コース前編の第1講座。その講座の中で、もう一つ印象的だったのが「今日帰ったら、必ずコミュニケーションが下手になります」という言葉でした。

実際、その日からの一週間、私はコミュニケーションが信じられないくらい下手になった事に驚きました。しかし、コミュニケーションが下手になってから、真剣にいろいろと考えました。人と会話をするたびに「あ、これは分析だ」とか、「これは同情」、「これは賞賛」、「あ、ごまかした」など、自分の言葉に注意を払い、どうすれば“相手をわかろうとする”ためのコミュニケーションができるのか、ずっと考える日々が続きました。

そうしたことを考え始めてからなのか、どうかははっきりとはわかりませんが、不思議な変化が起こり始めました。
なんと、私のまわりにうつ病の人が増えたのです。
正確に言うと、「今、会社にいけなくてお休みしています」とか「最近、病院に通い始めたんです」、「以前、うつ病でした」、「これって精神科に行った方がいいですか?」など、自分のことを打ち明けてくれる人が急激に増えました。

私のコミュニケーションがそんなに変化した自覚はないのですが、このタイミングと、打ち明けてくれた人の数、そして心理学を学んでいることを公表していないことを考えると、日本メンタルヘルス協会で学んでいく中で、私の中で何かが変わったのだと思います。

そうやって、自分の事を話してくれる人が増えると、「その人達の力になれているかもしれない」「心理学を学んでよかったな」と思うのですが、正直、辛いこともありました。


「親にも友達にも、誰にも言ってないことがあるんです」と、家庭のトラブルや、過去のトラウマの話をしてくれる人や、リストカットの痕を見せてくれる人までいたのです。
最初は、「相手をわかろうと」話を聴いているのですが、相手が「死にたい」という言葉を使った途端に「相手を変えなければ!」と思ってしまうのです。

この時の私の思いとしては、もちろん「相手を死なせたくない」というのもあるのですが、「中途半端に勉強したカウンセリングの技術で、相手を殺してしまうかもしれない」というのが正直なところでした。

基礎コースも終了していない私が、これ以上踏み込むのは危険だと判断し、精神科やプロのカウンセラーのカウンセリングを勧めてみましたが、相手は拒否。
私が話を聴けば聴くほど、相手を苦しめているのではないかと考えることもありましたが、その人が今までずっと問題を抱えてきたことを考えると、その人が話を聴いて欲しいと思う時だけ、静かに聴こうと思いました。

基礎コースを受講している間、こうやって私に相談してくれる友人がいてくれたおかげで、本当に真剣に受講することができました。実際に、講座を受講した後は、その講座で学んだことを実践してみるのですが、毎回のように大失敗。

基礎コースを終了するころには、心理カウンセラーとしての基礎的な知識と技術が習得できているはずだから、きっと上手く対応できるようになるはず、と思いながらがんばってきたのですが、実際に基礎コースを終了してみて、今感じているのは、「そんな簡単なものじゃない」です。

ただ、毎週のようにいろいろ実践して失敗を繰り返す中、いつも効果があるなと感じるのは、「相手の話を聴くこと」。

友人の悩みを聴き始めてから、約2ヶ月が経過しました。今でも「死にたい」という言葉がでることもあるのですが、あきらかに回数は減りました。また、以前より前向きに悩むことが多くなり、「自分を変えたい」という言葉が出てくるようになりました。ただ、そこで私が調子にのって相手を変えようとすると、拒絶反応が出ます。
相手を変えようとしなくても、相手をわかろうとするだけで、相手は自ら変わろうするのかもしれない。今はそう感じています。

先日、私の不適切な対応のせいで、友人が目の前でリストカットをしました。
本当に怖かったです。そして、それ以上に自分が本当に情けなくなり、今の私にはカウンセラーになる資格はないと思いました。
でも、だからこそ、これからも学び続けていこうと思っています。


基礎コースを終了して強く思うこと、それは“相手に寄り添えるカウンセラーになりたい”です。



 

~受講生のレポートより抜粋~
  紹介スタッフ:吉原

私は最初の体験セミナーから堤さんがとても印象に残っていました。
最初の体験セミナーでは、やはり初めての場所にお越しになるという事で
ほとんどのみなさんが緊張してお越しになります。その中、堤さんは笑顔で受付にいらっしゃったのです。
そして、先日2009年12月23日の大阪校基礎修了パーティーで
も素敵な笑顔で基礎心理カウンセラーとして修了式を迎えられました。
でも、その笑顔の裏では友人との関係やカウンセリングへの不安、
いろんな想いをかかえていらっしゃったんだなぁと、レポートを読ませていただいて気付きました。

いろんなアドバイスより、堤さんの「どうしたん?」という一言が
「相手をわかろうとする」言葉だったように、
時にアドバイスは「相手を変えようとする」言葉に聞こえるのかもしれません。

私も「相手を変えようとする前に、まず、わかろうとせよ」という言葉をとても重く感じた事がありました。

私には今も10年近く闘病している友達がいます。
闘病前は双子と間違われる程いつも一緒で、物事の感じ方や受け止め方までよく似ていました。
その頃の私達には海外でいろんな経験をして視野を広げたいという夢がありました。
でも、その友達は簡単に終わるはずだった手術の失敗で、
その夢だけではなく外出する事もできなくなったのです。
きっとその悲しみや辛さは想像を絶するものだったと思います。
でも、私はその友達の気持ちに寄り添う前に、元気を出してほしいという想いの方が勝ってしまいました。

私は一人で日本を離れ、イギリスに住んでいました。そこから、元気を出してほしいという想いから
近況報告をメールで送るようになり、その友達からの返事もいつも明るかったので、安心していました。
そんな中、共通の友達からその子が私からのメールが辛いと言っているというメールが届きました。
その時のショックは堤さんと同じで、今も忘れることができません。
インターネットカフェでボロボロ泣いたのを覚えています。
私は相手をわかろうとするのではなく、変えようとしていたんです。寄り添う事を忘れていました。

今もその友達は風が吹いただけでもビリビリする痛みに耐え、闘病生活を続けています。

そして、今の医療では治療方法がないと言われているそうです。

今は年に一度だけ、私はその友達の誕生日にお花を贈っています。
いつも想っているよという事だけ伝えたくて・・・・。
そして今年の私の誕生日にその友達から手紙が届きました。
「毎年ありがとう。覚えていてくれて嬉しい。」と・・・・。
やっと私は寄り添う事ができたかもしれないと思いました。

相手に寄り添う、わかろうとする、分かっていてもつい自分の価値観でアドバイスしてしまう事もあります。
でも、こうやって友達がいてくれたから失敗することもできたし、それに気付くこともできました。

「相手を変えようとする前に、まず、わかろうとせよ」

堤さんも私もショックな経験を経て、この衛藤先生の言葉の本当の意味を理解できたのかもしれませんね。
相手に寄り添うことの大切さを改めて考えされられました。
堤さん、素敵な笑顔と大切な気付きをありがとうございました。

そして、基礎コース修了おめでとうございます!