Home 受講生の感想レポート 「木と家族の絵を描く」テストセラピーで知った、接し方の糸口
「木と家族の絵を描く」テストセラピーで知った、接し方の糸口

大阪校  内田 暁人さん(23歳 男性)


 私が講座で一番印象に残ったのは、後編講座の「テストセラピー」でした。
 「木と家族の絵を描く」、それだけなのに、今の自分の心理状態があらわれるテストセラピーにとても興味をもちました。
 その頃の私はいろんな事に挑戦したいという思いがあったのですが、見事にその心理状態を投影したような絵になりました。またスタッフの方が、このテストセラピーは、悩みを持っている人に描いてもらうと、その結果からどういう風に接したらいいのか、そして解決への手伝いができるようになると言われていたのも、印象に残った理由の一つです。

 私は、現在中学三年生の従兄弟の男の子に木と家族の絵を描いてもらうことにしました。
 というのも、私の従兄弟は現在中学校に登校できていません。中学二年生の冬頃から除々に学校に行けなくなったのです。

 従兄弟は、以前は陸上部に所属し、明るく、友達が多い活発な男の子でした。それが、朝起きられないという理由で、学校に行く日が少なくなっていったのです。最初は従兄弟の家族はただ怠けているだけだと思っていたらしく、朝起きられるように家族みんなで協力して、学校に行かせるようにしていたそうです。しかし、夜なかなか寝ることができず、そのため朝起きられないという悪循環に陥ってしまったようでした。それを聞いた時は私も、怠けているだけなのではと思いました。

 ですが、どうやらそうではなかったようなのです。

最近、子供の鬱も多いといわれるようになりました。そのため、心配になった家族は従兄弟を心療内科に連れて行きました。診断の結果は、鬱ではないが、心の病ではないかということでした。
 従兄弟は、一度中学受験に失敗しており、それが原因となって、勉強がおもしろくなくなったのではというのが心療内科の先生の意見でした。

 あれだけ頑張って勉強しても報われなかった、勉強しても意味がない、そういう思いが、学校への抵抗感を生み出しているのではないかということでした。頑張って努力をしても報われないことはだれにでもあると思います。ただ、小学生だった従兄弟には大きな挫折だったのかもしれません。

 私も心配になり、従兄弟と話をしようと会いに行きました。話を聞いてみると、学校は友達にも会えるし、好きなのですが、勉強はおもしろくないそうなのです。実際に会ってみると今までと同じで明るく、友達が学校で配布されたプリントを持ってきてくれると、長い間玄関で話をしているそうです。

 私は、本人は学校が嫌いなわけではないし、落ち着いたら、また学校に行けるようになるのではないか、心配ばっかりせずに従兄弟を信じてみようと思いました。

 そして今年の春、従兄弟は中学三年生になりましたが、なかなか登校することができないようでした。さすがに中学三年生となると、高校受験を控えていますし、周りも心配になります。それは私も感じていましたので、久しぶりに従兄弟と会うことにしました。

 久しぶりに会う従兄弟は、変わらず元気で明るかったので、登校できていないことが不思議でした。その日は、従兄弟が学校の宿題で差別廃止のポスターを作るというので、一緒にポスターを仕上げました。このことからもわかるように、学校が嫌いというわけではないのです。宿題をきっちりしようと思っているのですから。。。私は、なぜ学校に行かないのか、学校に行くことは大切だなどと、相手を変えようとする事よりも、まず相手を受け入れて、話を聴くということに徹しました。日本メンタルヘルス協会の基礎講座で学んだことです。話を聴いて受け入れて信頼関係を築くことからはじめました。そして、ポスターを一緒に仕上げることも、何かを一緒に取り組むだけでも、応援してくれる人はいると感じてもらえれば、従兄弟の心の支えの一部になれるのではないかと考えたからです。

 ポスターを仕上げた後、木の絵を描く心理テストをやってもらいました。この心理テストを通じて今の従兄弟の心理状態を少しでも理解したいと思いました。結果は、紙のサイズに対して少し木のサイズが小さいのが気にはなりましたが、それ以外気になるところは見つかりませんでした。広葉樹で、根はしっかり描かれているし、木の幹も太くしっかりしていました。やりたいことを表す木の実も描かれていて、バランスが良いなと思いました。木の絵を描くと今の心理状態が分かる事を従兄弟には伝えていなかったのですが、この心理テストの意味と結果を伝えることが、従兄弟にとってプラスになると思い、私は伝えることにしました。

 そして、その日は私の学生時代の話や、苦難や挫折を乗り越えた経験、一日一日を楽しんで生きる事を大切にしている理由など、たくさんの話をしました。相手を変えることはできないけれど、影響を与えることはできるはずです。私の体験を話すことで、自分に起こる苦難や挫折は必ず乗り越えられると感じてもらえたらと思いました。

 しばらくすると、従兄弟は自分の夢を話してくれました。従兄弟は数学が好きで、建築の設計をしてみたいということでした。どこにでもあるものではなく、自分オリジナルのものを作りたいと話してくれました。そして一番の夢は俳優でした。まだ中学生の従兄弟が、こんなに明確な夢を持っていること、そしてそれを私に話してくれたことに感動しました。
 従兄弟とこんな話をしたのは初めてでしたし、こんなに心を開いてくれるとは思いませんでした。何か影響を与えることができたかはわかりませんが、この日の事が少しでも今後の従兄弟の支えになればいいなぁと思います。

 また、従兄弟と一緒に暮らしている祖母にも木の絵を描いてもらいました。すると、水辺に木が5本並んだ絵でした。そして、その中の一本の木がほかの木に比べて半分くらいの大きさなのです。家族画ではありませんし、偶然かもしれませんが、現在の従兄弟の家の家族構成が五人なのです。祖父、祖母、父、母、そして従兄弟です。祖母は何も意識せずに木の絵を描いたそうなのですが、結果、五本の木の絵が描かれ、その中の一本は背が低い・・・私はこの背の低い一本の木が、中学三年生の従兄弟なのではないかと思いました。私には祖母の絵はどこか家族の繋がりを求めるような、水辺に佇む少し寂しげな絵に見えました。もしかしたら、孫を心配している家族を表していたのかもしれません。

 後日、おばさんからの連絡で、その後の従兄弟の状況を知りました。私と話をした日以降、朝起きて学校に行ける日が多くなったということでした。この事は、私にとってとても嬉しい驚きでした。どれだけ従兄弟の心に影響を与える事ができたかはわかりません。しかし、日本メンタルヘルス協会の基礎講座を受講していたからこそ、従兄弟の心に寄り添い、このような影響を従兄弟に与えられたのだと思います。

 今後も日本メンタルヘルス協会で学んだことを日常の中で活かしていけるよう、学び続けたいと思います。

 

~受講生のレポートより抜粋~
  紹介スタッフ:吉原

講座はいつも真剣に向き合い、同じ受講生のみなさんとも明るい笑顔で接している内田さんの姿が、とても印象に残っています。

 一生懸命だけど、穏やかさも感じる姿は私にとって、とても勉強になりました。
 そんな姿の内田さんはまさに身近な心理カウンセラーだったと思います。
 レポートを読ませていただいて、特にそう思いました。
 そして、私の周りの身近なカウンセラーの存在が頭をよぎりました。

 以前、いろんな事が重なり自然と涙が溢れてしまうくらい辛かった時期がありました。
 その時、「今何してる?」と友人にメールをしました。
 夜遅かったにもかかわらず、「今からタクシー飛ばして行こか?」とすぐ返事をしてくれました。
 何も言っていないのに、気持ちに寄り添ってもらえた事で一瞬にしてその辛さが消えてしまったた事を思い出しました。心に寄り添う事はとても大きな影響を相手に与えると思います。

 内田さんの従兄弟の男の子もきっと、心に寄り添ってもらえた事を感じたのかもしれませんね。

 「相手の心に寄り添う」
 どれだけ出来ているか・・・・。
 どれだけ相手を思っているか・・・・。

 内田さんのレポートで、改めてその大切さを思い出させてもらいました。
 そして、改めて心に寄り添ってくれたその友人に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 内田さん、素敵なレポートありがとうございました!
 また、リピート受講で内田さんの笑顔に出会えるのを楽しみにしています!